フッ素系洗浄剤 VS 環境規制 ~フロン代替品を探して~

【今月のお悩み】

平成以前よりフロンによるオゾン層破壊の影響が問題視されてきたことは皆さんもご存知ですよね。

工業の部品洗浄ではその性能の高さからフッ素系洗浄剤(フロン)を用いてきた会社様も多くありました。

しかし、現在は度重なる法改正や規制で洗浄剤選びも一苦労のようです・・・!

 

 

相談者A

えぇっ、また規制かぁ・・・

今使っている洗浄剤が使えないとなると、代替品を探さないといけないのか。

大変だな~・・・

 

洗浄ブルー

おや、お困りのようですが、どうなさいました?

 

相談者A

あっ、洗浄ブルー!

今使用しているフッ素系洗浄剤が「地球温暖化係数?」とか「オゾン破壊係数?」が大きいみたいで、

規制されてしまったんです。

乾燥性が良く生産性が高いので、それに代わる物はあるのでしょうか・・・?

 

洗浄ブルー

代替品を探す際、洗浄性能やコストなど条件に合うかどうかを確認することが一番です。

しかし、別の規制に引っかからないためにもフッ素系洗浄剤について知る必要がありますので、

博士から「フッ素系洗浄剤が環境規制に追われるようになった訳」を聞いてみませんか

 

相談者A

ええ、ぜひともお願いしたいです!

 

3Cラボにて、フッ素系洗浄剤の勉強会が始まるようです!

 

洗浄ブルー

博士!こちらの困ったさんにフッ素系洗浄剤について話してあげてもらえませんか?

 

博士
(ラボボス)

もちろんじゃ!

さては近年の規制で代替品をお探しの方じゃな?

 

洗浄ブルー

博士はなんでもお見通しですね。

フッ素系洗浄剤と環境を取り巻く世の中の変化は目まぐるしく、歴史は長いものになります。

ですので、その歴史を知れば今後の洗浄剤選びに活かせるはずです。

 

シーファー

シーファーも一緒にお勉強したいのだ~!

 

博士
(ラボボス)

せっかくの機会じゃ、皆で集まろう。

 

相談者

ありがとうございます!これを機に学びたいと思います♪

 

フッ素系洗浄剤と環境の歴史

「フロン」オゾン層を破壊する悪い物質というイメージから、良くない物と思い浮かべる人が多いと思います。

 

フロンは科学的な安定性が高い点から地上では分解することが難しいものになります。

分解されなかったフロンが上空に運ばれ成層圏(地表から10km~50kmまでの空気の層)へ達すると、強い紫外線により分解され塩素を発生させます。

発生した塩素はオゾンを一酸化塩素と酸素分子に分解するため、オゾン層が破壊されるというメカニズムが「良くない物」と思う理由です。

 

 

工業においてフッ素系洗浄剤すなわちCFC(しーえふしー)/クロロフルオロカーボン=フロンは、高い乾燥性と毒性の低さを併せ持つ理想の洗浄剤として、精密部品やプラスチック、プリント基板などの単価が高く微細な部品洗浄に能力を発揮してきました。

 

しかし、フロンはオゾン層破壊の原因物質であるとされ、1987年に「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」により、大気への排出規制対象となりました。

中でもCFC-113は、洗浄剤や冷却剤、発泡剤、噴霧剤として幅広く用いられてきましたが、1996年に全廃が決定されました。

 

そこで水素を添加して分解しやすくしたHCFC(えいちしーえふしー)/ハイドロクロロフルオロカーボンが代替物質として注目されるようになりました。

代表的なものでいくと、不燃性かつ熱的安定性や化学安定性が高いことやその他の洗浄に関する性能が優れていることから、HCFC-225が代替品として精密洗浄等にもちいられました。

 

しかし、HCFCは地球温暖化係数(GWP)が二酸化炭素と比較して著しく大きい点から新たに規制対象となり、先進国では2020年に全廃され、開発途上国では2030年までに全廃されることとなりました。

 

現在は更なる代替品としてHFC(えいちえふしー)/ハイドロフルオロカーボン、HFE(えいちえふいー)/ハイドロフルオロエーテル、HFO(えいちえふおー)/ハイドロフルオロオレフィンなどが使用され、精密部品の塵埃除去や光学部品の水切り乾燥、炭化水素洗浄後の置換剤として活躍しています。

 

フッ素系洗浄剤の特徴

環境対策だけでもクリアできれば安定的で毒性も低いため理想的な洗浄剤だと思いますが、フッ素系洗浄剤は万能洗浄剤ではありません。

ここではフッ素系洗浄剤のメリット・デメリットと、現在主流となっているHFC、HFE、HFOについてご説明します。

 

メリット

  •  不燃性
  •  人体への毒性が低い
  •  乾燥性が良好
  •  表面張力が小さく、浸透性が良いため細部の洗浄が可能
  •  樹脂へのケミカルアタック(変形、変色、溶解など化学的な変質)が極めて少ない
  •  蒸留再生が可能
  •  比熱、蒸気潜熱が小さいためエネルギー負荷が少ない

 

特徴としては数ある洗浄剤の中でも、フッ素系洗浄剤は強制乾燥させなくても一番早く乾くという点です。

 

デメリット

  •  溶解力が低い
  •  ランニングコストが大きい
  •  再生ロスが大きい

 

これらのデメリットを解消するには、以下の三点について検討してください。

 

  •  「どの程度の汚れを洗浄するのか」必要な溶解力を明確にする、用途を定める
  •  「ランニングコストに見合うのか」⇒ワークの単価、ランニングコストを抑えた装置設計
  •  「洗浄剤のロスを減らすためには」⇒洗浄ロスの少ない洗浄方法・装置の検討

 

フッ素系洗浄剤の種類

フッ素系洗浄剤は下記の3種類が多く使用されております。

 

 HFE(ハイドロフルオロエーテル)

 HFO(ハイドロフルオロオレフィン)

 HFC(ハイドロフルオロカーボン)

 

この三種類の性能には大きな差はありません。

その為、環境対応のレベルやコスト、自社の設備やワークに合った洗浄液選びが必須です。

 

上記で上げた洗浄剤の特性を下記の表にまとめました。

 

この表では、HFCは地球温暖化対策推進法に該当することが分かります。

また、3つの洗浄剤にはGWP(地球温暖化係数)にも大きな差があります。

 

このことから、環境に優しい順に並べると・・・

 

HFO ⇒ HFE ⇒ HFC

 

つまり、HFOが一番環境に優しいフッ素系洗浄剤ということになります。

 

相談者

それではHFOを使用すれば万事解決ですね!

今すぐ発注してきます!!

博士
(ラボボス)

慌てるでないぞ。

自社の洗浄方法や装置と合わない洗浄液はロスがつきもの。

洗浄液に合った洗浄方法を知ることも大切じゃ!

洗浄ブルー

それでは、私がフッ素系洗浄剤を使用した洗浄方法の一例を紹介しましょう!

必殺技をご覧ください!

 

シーファー

ご相談やお問合せはこちらからなのだ~!

 

記事一覧