半製品である塗料は、乾燥し塗膜となって初めて製品になります。
乾燥工程は塗料を「塗膜」にし、半製品を製品にする大切な工程です。
しかし、乾燥炉の中で乾燥している間は途中経過を確認することが出来ないため、開けてみると不良が発生していてビックリ!なんてことも。
その原因は乾燥炉内にあることが多く、明らかにしないまま使用し続けてしまうといつまで経っても不良は無くなりません。
ここにも、乾燥トラブルの原因がわからないまま、試行錯誤している困ったさんがいるみたいです。
現場にて・・・
よし、乾燥終わり!
おや、塗膜がまだ柔らかいようだけど、温度が低かったのかな?
そのようですね~、ヒヒッ!
チマチマやってても仕方がないですから、一気に50℃くらい上げてやってみましょう!
やはりそうですよね、後に控えているものもあるから早く乾かさないと!
数十分後・・・
うわ、なんだこりゃ!
白い塗料なのに、黄ばんでる?
はぁ~、剥離してもう一回やるしかないか・・・
ええ、そうするしかありません!
ウヒヒッ、その調子でドンドン試してみましょう~。
(あ~、ムダがたくさん出て素晴らしい現場ですね~!)
次の乾燥が終わり・・・
え、このポツポツした穴は何だ?!
なんだか調子悪いなぁ・・・
おやおや、塗料も少なくなってきていますね~。
今ならお安く提供しますよ~、ヒヒヒッ!
(これは良いお客さんを見つけたぞ~、イーッヒッヒッヒ!)
なんでこんなに不良が出てしまうのかわからないけど、とにかく試して頑張ってみるしかないですよね。
その塗料、買わせてください!
待て!!ダークムーダー!!
現場の方の貴重な時間と塗料を無駄にするのは許さない!
自分がその塗装不良の原因と対策を教えましょう!
げげっ、出たな!塗装グリーン!
この方は一生懸命努力されて最適化しようとしているのに、失礼だぞ!
実を結ばない努力に導いているのはダークムーダー、お前だ!
ここは引っ込んでいてもらおう!
正直、やり直しばかりで心が折れそうでした。
不良が出る原因を突きとめて、乾燥トラブルを無くしたいです!
ぐぬぬ・・・今回はうまくいったと思ったのに~!
キィィーッ!覚えておれ~!
乾燥工程で発生するトラブル
乾燥工程で発生する様々なトラブル。
一つのトラブルでも複数の原因が考えられるため、不良を完全になくすことは一筋縄ではいきません。
ですが、発生した不良の種類と原因を知り、その対策について知識を持てば、一つ一つ解決できること間違いなしです!
今回は乾燥工程に注目して、そこで起きるトラブルの原因と対策について説明いたします。
乾燥工程で発生する主なトラブル
乾燥工程において発生する主なトラブルは以下の4つになります。
- ゴミブツ不良
- ワキ
- 変色(黄変)
- 乾燥不良
これらのトラブルに対して、詳しく説明いたします。
ゴミブツ不良
塗装後の製品は塗膜になるまでベタベタとしています。
乾燥工程を経て塗膜になるとベタつきませんが、それまでの間、塗装面は鳥モチ状態(鳥や昆虫を捕まえるのに使うゴム状の粘着性の物質のような状態)で、当然ここにホコリや異物、繊維などが付着すると不良に繋がります。
ではなぜ乾燥炉内にて不良の原因になる粗大粒子が存在するのでしょうか?
塗装用の乾燥炉の場合、炉内の温度バラツキを無くすために炉内を掻きまわすような風を循環させています。
この風があることで粗大粒子が炉内を飛び回り、鳥モチ状態の塗装面に付着してしまいます。
実際に多くの乾燥炉を見てきましたが、異物をキャッチする循環用のフィルターを取付けてある例は非常に少なく、極端に言えば塗装面がフィルター代わりになってしまっている状態も見受けられます。
また、乾燥炉内にあるホコリは
- 持ち込みゴミ
- 発生ゴミ
の2種類があります。
「持ち込みゴミ」の多くが治具や台車・コンベアなどから落下した剥離塗膜や錆、砂や繊維ホコリなどになるため、治具の塗膜剥離や用具の清掃、除塵をすることで防ぐことができます。
「発生ゴミ」は炉内壁面などへ蓄積したヤニなどが劣化し脱落して発生します。
こちらも発生しにくい排気状況の改善や除去が必要になります。
ワキ
乾燥工程で多いトラブルが、塗装面に小さくポツポツとした穴が発生する「ワキ」になります。
塗装後のセッティングが不十分だったり、希釈用シンナーが早すぎたりする場合に発生しやすくなります。また厚塗りになり過ぎる事によっても発生します。
原因は塗装面内部に残っている溶剤が塗膜表面から揮発する際に、表面が乾き膜が張ってしまっていると、内部の溶剤が揮発できずワキやピンホール(穴が素地まで達しているもの)が発生します。
乾燥性の遅いシンナーでも発生する場合は、セッティング時間が短かったか、急激に炉内温度が上がり過ぎた事による可能性があります。
炉内で熱風の吹き出し口に近すぎたり、炉内温度が急激に上がっている可能性がありますのでそちらも確認してください。
変色(黄変)
特に白色系の塗装で起こりやすい、焼付乾燥後に色が若干焦げ茶色に仕上がる現象を黄変と呼びます。
原因として考えられるのが、
- オーバーベーク
- NOxガスによる変色
の2つになります。
「オーバーベーク」はその名の通り焼き過ぎが原因です。
トーストを焦がしたイメージに近く、塗膜の硬化条件に対して高すぎる温度で焼付乾燥を行った場合に発生します。
設定温度は問題ないのに発生している場合は、温風吹き出し口付近の熱くなる箇所で発生していないか確認してください。
もしその箇所で発生しているようならば、製品の置き場所などを少し離して対策してみてください。
もう一つの原因「NOxガスによる変色」は、直接加熱のガス式乾燥炉で発生し、電気式の乾燥炉や間接加熱方式のガス炉では発生しません。
塗料から発生する溶剤ガスが適切に排気されず乾燥炉内にとどまり、ガスバーナーの炎で分解されるとNOxガスが発生し、それにより塗料が酸化され黄変します。
乾燥炉のガス使用量を下げる為に排気を絞り過ぎると顕著に発生しますので、様子を見ながら適量を排気するようにしましょう。
乾燥不良
乾燥炉で焼き付ける際に、設定温度や焼付時間が乾燥条件から離れていることで発生します。
乾燥不良の場合、塗膜硬度や密着性、耐候性などが不足しており本来の能力が発揮できないにもかかわらず、乾燥後の塗膜は見た目が変わらないため、気付かずに出荷してしまう可能性があります。
例えば、メラミン塗料を塗装し焼付乾燥をする際、カタログには140℃×30分と記載されているため、乾燥炉の設定も140℃×30分で乾燥したとすると、乾燥不良が起きているかもしれません。
カタログに記載されているのは、焼付乾燥時の物体温度とそのキープ時間になるからです。
また、板厚がかなり厚いものなどは設定温度や時間を調整する必要があります。
乾燥炉では、上記以外にも様々なトラブルが発生します。
ワークのサイズや素材、形状、また使用される塗料に適した乾燥炉を選ぶことがポイントになります。
乾燥炉でのトラブル対策
乾燥時のトラブル原因を知っていれば対策することが可能です。いくつかのポイントをご紹介させていただきます。
- 乾燥炉の定期清掃
- 炉温測定
乾燥炉の定期清掃
乾燥炉内を定期的に清掃点検しましょう。
乾燥炉が熱くないときに炉内床面のゴミなどを舞い上げないように気を付けながら掃除機などで除去し、ヤニなどがついている場合も小まめな除去を行うほうが良いでしょう。
いずれにしても乾燥炉内の定期的な清掃が改善のポイントになりますので、乾燥炉内の異物を除去してください。
炉温測定
乾燥炉内の温度分布やワークの温度上昇の様子を特殊な温度計を使用し測定します。
乾燥炉の温度センサーは通常1ヵ所しか測定していませんが、炉内複数箇所とワークの温度を測定することで最適な温度・時間の設定ができ、乾燥不良のリスクを下げ、装置の不具合も確認することができます。
乾燥工程を最適な状態にすることで、塗装不良を低減して、トータルのコスト削減を目指しましょう。
なるほど!
私の場合は乾燥不良に、黄変に、ワキに・・・うわぁ、盛りだくさんだ。
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