【塗装の現場リアルインタビュー】化学の力で塗装品質向上!新規受注を獲得した取り組みとは?

 金属塗装業:株式会社ホリティック 代表取締役社長 堀川貞幸氏特別インタビュー

 

長野県中野市で建材や金属製品の表面処理加工及び焼付け塗装を長年手掛けるホリティック株式会社。

創業より58年が経つ同社は、お客様の様々なご要望に対し“高品質”で応えてきました。

今回は同社が取り組まれてきた“塗装品質の向上”に着目し、その具体的な取り組みについてお聞きしました。

 

会社プロフィール:株式会社ホリティック

  URL : https://www.horitech.co.jp/


1966年自動車板金工場で塗装事業を開始。

アルミ鋳物門扉、フェンス及びビル用

外壁パネルなどを専門としていたが、

2003年より「ネジ一本から塗装します」

をキャッチフレーズに業界、製品を選ばない

異業種への新規開拓を行う。

現在は、建材のほか、業務用冷蔵機、

半導体製造装置、配電盤、防災無線制御盤、

ジェットヒーターなど幅広く、工業製品の

焼付け塗装を手掛けている。

 

 

シーファー

社長さん自らインタビューに答えてくれて緊張したのだ~

でも、とっても優しい社長さんで、たくさんお話を聞けたシーファー♪

 

塗装グリーン

塗装業界で長年活躍されている社長さんのお話は、

この業界に携わる人のお困りごと解決のヒントになるはず。

さっそく話を聞いていこう!

 

—  お客様の「高い品質要求」に対応するために、堀川社長がかねてよりおっしゃっている、化学的な塗装品質向上への取り組みとは具体的にどのようなことですか?

 

あらゆる業種のお客様から依頼していただけるようになり、鉄1つとっても多くの部材がありました。“鉄”という素材が同じでも、個々の部材に対して適切な塗装仕様というのは調べてみないとわかりません。ですので弊社では、塗膜に対し沸騰水試験機や恒温恒湿試験器を用いた評価を自社で行い、その結果をもとに塗装仕様の提案や仕上り品質について事前にお客様へお伝えしています。

 

— 塗膜評価の多くをメーカーや専門機関がやっているなかで、なぜ自社に試験機を導入し評価しようと思ったのですか?

 

 

 

塗装の役割には「機能」「保護」「美観」がありますが、そのなかでも耐食性や密着性といった「保護」の部分である塗装前処理は、塗装会社独自のものだと思います。これらをメーカーなどへ頼むこともできますが、どうしても時間が掛かり長期間様子を追うことはできません。ですので、お客様からご依頼があれば早急に評価しお返事できるように、自社で担保しようと思いました。

 

左 デジタルマイクロスコープ/右 沸騰水試験機 左 塩水噴霧試験機/右 恒温恒湿器 

 

そのほか、同社で行っている評価試験概要は、下記リンクよりご確認いただけます。

https://www.horitech-n.com/

 

— 独自で行う評価試験から、高い塗装品質と安心という部分をお客様へご提供されているのですね。これらの取り組みにより、新たに受注されたお仕事もあるのですか?

 

ありがたいことですが、TOYOTAさんの事務棟ですとか、ロレックスさんの店舗塗装をまかせていただきました。TOYOTAさんの案件は、塗膜性能を化学的に担保すること、 新たな受注につながることを知るきっかけとなりましたし、ロレックスさんの案件は塗装の「保護」だけでなく「美観意匠」という点においても評価をいただけました。あとは北海道のお客様にはマイナス20℃に塗膜が耐えられるのかという低温試験を実施したんですが、ちょっとしたトラブルがあって、北海道まで行ってきたんですね。ただ実際は、弊社の問題ではなかったんですけど、それも試験の結果があったから証明できたものなんです。こういったトラブルが発生したときにも、重要な役割を果たしてくれ るんだなと実感しました。

 

— まさに独自の取り組みにより着実に成果をあげられていますが、そもそも塗装品質を化学的に証明し、品質管理に力を入れていこうと思ったきっかけはあったのですか?

 

 

 

 

ある日本のトップメーカー様からビルの外壁塗装のお話をいただいたときに、「工期が3年ほどあるが、その間塗膜は大丈夫なのか?もし剥がれてしまうのなら御社にはお願いできない」と言われたんですね。そこで、様々な試験を塗料メーカーさんにお願いしたんですけど、納得してもらえなかったんです。日本のトップメーカーさんですから、正直うちのような会社よりは、日本で1番と言われるような塗装会社に発注したかったんだと思います。まあ、それはそうですよね。でも、うちとしても何とか仕事を取りたかったので、いろいろ試行錯誤して、「*代用TP」による評価試験をやろうとお客様に提案したところ、ガラッと風向きが変わりましてね。「そこまでやってくれるなら是非御社でお願いしたい」と言っていただけまして、その経験から塗膜品質を化学的に担保した、塗装仕様を提案することに力を入れるようになりました。

 

*代用TP : 実際の塗装面と同様の特性を持つ素材で作った評価試験用のテストピース

 

 

— 化学的に品質を担保することで、会社の規模に関わらず新規受注につなげていけることを証明されたのですね。しかし、安定した品質保証・管理を行うためには「人材の確保と教育」が必要だとも思うのですが、塗装作業者の確保、人材育成についてはどのような取り組みをされていますか?

 

もちろん人材が不足している現在では、塗装技術の継承や習得、若手の育成はとても重要です。それでNCCさんに開催していただいた「*塗装道場」で、「塗料・シンナーの基礎」や「塗装の基本」について学ぶ機会を作りました。シンナーについて学ぶ際には、暑い日にあえて夏用と冬用のシンナーを使い、空の一斗缶表面と裏面を塗り比較してみたのですが、「仕上がりがこんなに違うのか!」とそこで初めて気づけたみたいで、開催してもらって非常に良かったですよ。

 

▼ 塗装道場の様子

 

*塗装道場とは? : 若手の育成を目的として、塗料や研磨剤、調色などの基礎知識から、塗装技術なども学べる講座。

         お客様のご要望に合わせた研修カリキュラムも可能です。過去の塗装道場の様子はこちらから!

 

 

 

— 人材育成以外にも、塗装作業者の労働環境や業務改善にも積極的に取り組まれているとお伺いしました。どのような改善を行われたのですか?

 

塗装は過酷な現場ともいわれてますけど、特に塗装ブースの汚れからくる異臭だったりスラッジとかの清掃は改善したかったんですよね。それでNCCさんからご紹介していただいた塗装ブースクリーナーの「SK-GO」と「遠心分離機」を導入してみたんです。この導入効果はすごくありました!これまでブースの下に沈んでいたスラッジは勝手に浮いてくるし、遠心分離機でスラッジが自動回収されるので掃除の手間はかなりなくなりましたよ。塗装ブースがこんなに綺麗に保てるんだなって。作業者の負担も減って思い切って導入して良かったですね。

 

 

 

 

— 最後に、御社の今後の展望をお聞かせください。

 

 

 

 

粉体塗装への切り替えが加速している昨今ではありますが、一方で溶剤塗装でしか出せない「美観意匠」というのがあるんです。それは希釈するシンナーの割合による粘度調整や乾燥の速さの選定、そしてそもそもの塗装技術により出せるものなんですね。大手さんが粉体塗装へ移行しているなか、自分たちが生き残る戦略というとまさにこの大手さんがやっていない領域(溶剤塗装)かなと。あとは「保護」の部分である塗装品質の評価試験は変わらず強化していきます(6月には「塩水噴霧試験機」を導入)。そういった取り組みから塗装にさらなる付加価値をつけて、お客様に安心、信頼していただくことがまず第一ですし、それが新規の受注獲得や継続した受注にもつながるんだと思います。そうやって技術と信頼で仕事をいただけるようになり、さらには「塗装」の仕事は所得がとれるんだ!塗装作業者になりたい!という若者がどんどん増えてくれればいいなと思います。

 

 

シーファー

長年にわたり塗装業界で活躍されてきた堀川社長の、経験と実績を

活かしたお話は、たくさん勉強になったのだ~♪

 

博士
(ラボボス)

そうじゃな。お客様からいただく信頼を何より大切にして、それを維持するために「品質の追求と向上」に

取り組まれてきた同社の姿勢は、企業の発展と成長を実現するヒントになるはずじゃ!

 

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