化審法

化審法とは、「化学物質の審査および製品等の規制に関する法律」の略称であり、人の健康や動植物の生息・生育に悪い影響を与える恐れがある化学物質による環境の汚染を防ぐことを目的とした1973年に制定された法律です。

対象の化学物質の使用だけでなく、製造や輸入についての審査などについても必要な規制を行う役割を担っています。

PRTR法と混同しやすいですが、特定化学物質の排出量を把握することを目的としたPRTR法とは内容が異なるので要注意です。

 

化審法が生まれた理由

化審法が成立した背景には、1968年に発生した「カネミ油症事件」が大きく影響しています。

この事件では、製造工程でポリ塩化ビフェニル(PCB)などが混入したライスオイルを摂取した人々が、吹出物、色素沈着、目やになどの皮膚症状のほか、全身倦怠感、しびれ感、食欲不振など多様で深刻な健康被害が起きました。

 

カネミ油症事件では、ポリ塩化ビフェニルなどが混入したライスオイルを摂取した人々に深刻な健康被害が起きました。

 

PCBは化学的に安定で、電気の絶縁性も高いため、変圧器の絶縁油などに使われていた一方で、体内に蓄積されやすく、分解されにくいという性質も持っていました。

この事件をきっかけに化学物質の危険性に対する国民の意識が高まり、新規化学物質の事前審査を義務付けるなど、世界に先駆けた化学物質の規制である化審法の成立へとつながります。

 

化審法の役割

化学物質による環境の汚染や人間への影響を防止する目的がある化審法ですが、具体的にどんな内容なのでしょうか?

大きく分けて3つの内容から構成されています。

 

①新規化学物質の事前審査

新しく作ったり輸入される化学物質について、国が事前に詳しく調べ、安全であるかどうか審査する制度です。

新規化学物質とは、これまで化審法の官報整理番号がついていない、つまり国に登録されていないような全く新しい化学物質のことです。

このような新規化学物質は国がその性状、毒性等を確認し、規制対象となる化学物質であるか判定します。

この判定結果を受け取るまでは製造や輸入することはできません。

 

②上市後の化学物質の継続的な管理措置

製造・輸入した化学物質の数量を把握することや、有害性情報の報告などに基づくリスク評価を実施することです。

化学物質を製造したり輸入したりした企業は、どれくらいの量を製造・輸入したのか国に届け出なければなりません。

また、その化学物質について有害性情報を得た場合には、国に知らせる必要があります。

国は、これらの報告された情報をもとにその化学物質のリスク評価などを行い、必要な場合には規制措置を講じることもあります。

 

③化学物質の性状等に応じた規制および措置

分解性、蓄積性、毒性、環境中での残留状況などといった化学物質の性状に応じて規制や措置を行うことです。

化学物質の性状等に基づき、第一種特定化学物質に指定された化学物質については、製造や輸入する際の許可、取扱基準への適合、表示などを行わなければなりません。

 

化審法は、危険性の高い化学物質を管理し私たちが安心して暮らせる社会を実現するために、重要な法律です。

複雑な部分もありますが、化学物質による健康被害や環境汚染を防ぐためにも、経済産業省や環境省のホームページを確認し、適切な対応をしましょう。

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