【今月の相談】
今回は上司から「粉体塗装が注目されているらしいから、わが社でも導入を検討するように」と頼まれた現場担当者から相談をいただきました。
あ~困った・・・
上司から粉体塗装(塗料)について導入検討するように依頼されたんだけど、
どんな塗装なのか全然よくわからない・・・
どこに相談すればいいんだ・・・ はぁ~
粉体塗装(塗料)にお困りなら
私にご相談ください!
と、塗装グリーン、いつの間に・・・(驚)
でも、急に「ご相談を」と言われても、何から質問していいのかすら
わからないのですが・・・
大丈夫! 安心してください!!
粉体塗装は一般の塗装とは根本的に違う部分があるので、
基礎からきちんとお教えします!
まずは「粉体塗装のメリット・デメリット」から、ご説明します。
ありがとう♫
そうそう、思いっきり基本的なことが知りたかったんです。
おかげで粉体塗装の事が少し理解できました✨
「粉体塗料」「粉体塗装」・・・ここ最近、急速に関心が集まっている新ジャンルの塗料です。
なんとなく知っている・・・という方は多いものの、「粉体塗装って、どういう塗料を使って、どのように塗装するの? 」
「どんな素材に対応しているの?」 などなど、ちょっと突っ込んだことは案外知らない方も多いものです。
そこで! 3Cラボでは総力を上げて、 粉体塗料/塗装の基本をゼロから説明します。
よく知っている方は復習のつもりでご覧ください。
それでは、まずは粉体塗料のメリット・デメリットからご説明いたします。
「粉体塗料」ってどんなもの?
環境意識の高まりとともに、工業系用途で使用されている塗料においても溶剤を含んでいない塗料に関心が集まっています。
日本パウダーコーティング協同組合「一般的に工業用に使用される焼付塗料生産量推移(推定固形分として)」によると、2018年の日本の全焼付塗料生産量の約16%程度(重量換算)が粉体塗料になっており、国内でもかなり普及してきていることがわかります。また海外ではさらに粉体塗料が普及しています。
こんなに普及してきているのに(これからますます増えるでしょう!)、意外と知られていない粉体塗料(塗装)。そのままにしておくのはもったいない! この機会に良さや特徴などを理解して、導入検討の一助になれば幸せです。
では、粉体塗料の最初の一歩。「良い点」と「そうでもない点」についてまとめてみました。
「粉体塗料」のメリット・デメリット
粉体塗料(塗装)は良い部分が多くありますが、イマイチな部分もあります。しかし最近では、それらの問題を解決する塗装機や塗料がでてきています。デメリットを理解したうえで使いこなせば、とても使いやすい塗料(塗装)になってきています。
以下、メリット・デメリットをまとめてみました。
粉体塗装(塗料)の良いところ【メリット】
- 溶剤を含まないので溶剤臭がしない(環境面)
- 粉体塗料は危険物ではないので、危険物倉庫等が不要(安全面)
- 希釈粘度調整等の段取りが不要(希釈量、希釈シンナー選定等)
- セッティング工程(溶剤飛ばし)が不要
- 洗浄シンナーを使用しなくてよい、エアブロー等で洗浄
- 初心者でもある程度きれいに塗装できる
- 厚膜の塗膜が得やすい、厚塗りしやすい
- 塗料の貯蔵安定性が良い
- 粉体塗料を回収して再利用が可能(要専用装置)
粉体塗装(塗料)、ここがイマイチ【デメリット】
- 粉塵の吸引注意(環境面)
- 色替え時の清掃を十分にしないとコンタミ(他の塗料混入)が発生する
- 溶剤に比べ膜厚管理が目視では難しい
- 塗り直し時に静電反発が発生し塗装肌が荒れやすい(コロナ方式に関して、 塗装機で解決可能)
- 塗り重ね時に足着けしないと剥離する塗料品種もある
- 粉体塗料は開封後は湿度に弱い
- 粉体塗料の凝集が発生するため30℃以下で管理が必要
- 一般的に塗料納期がかかる
- 粉体塗料の生産数量によってコストが大きく変わる
- 被塗物の耐熱性が必要(180℃30分以上)
- 被塗物の導電性が必要
溶剤型塗料と粉体塗料で塗装対応可能な被塗物を比較すると、溶剤型塗料>粉体塗料というように、粉体塗装ができる被塗物は溶剤型塗料に比べると限定されてしまいます。
しかしながら、作業性、工程短縮、性能等は、溶剤型塗料よりも優れている場合もあります。様々な観点から比較し、検討していただく必要があります。
どんな素材に塗れるの? 粉体塗装ができる被塗物
続いて、具体的に粉体塗装が可能な被塗物について、ご説明させていただきます。
粉体塗装(静電粉体塗装)をするには、下記の2つの条件を満たしていないと粉体塗装ができません。
-
被塗物(ワーク)の加熱
160℃~180℃の熱が30分程度かかりますので、被塗物は耐熱性が必要です。
-
被塗物が導電物(※静電塗装の場合)
静電気を使い粉体塗料を被塗物に付着させます。
そのため被塗物は電気を通せる物であることと、アースを取る必要があります。
この条件を満たせる被塗物は、鉄、SUS、アルミなどの金属製品が多くなります。
金属系以外の素材でも、この2つの条件をクリヤーできれば、静電粉体塗装ができる可能性があります。
また、流動浸漬方式であれば、耐熱性の条件さえ対応できる素材であれば、塗装することができます。
ただし、塗装の密着に関しては、素材と塗料の相性が関係しますので、ご相談ください。
ここまでの説明で粉体塗装は、塗装可能な製品が限定されることをご理解いただけたと思います。では具体的にどんな製品に使用されているのか、そして、どんな条件の被塗物に塗装が可能なのかをご説明させていただきます。
粉体塗装が可能な製品例
身近な製品にも粉体塗装されたものが多くあります。すべての製品が粉体塗装とは限りませんが、なんとなくイメージを持っていただければと思います。
品種 | 具体的商品 |
建築資材 | フェンス、支柱、エクステリア製品など |
通信機器 | 電気、ガス、水道等メーターなど |
自動車部品 | アルミホイール、ワイパーなど |
道路資材 | ガードレール、道路標識など |
ガス水道 | バルブ、配管など |
家電製品 | 洗濯機、冷蔵庫など |
家庭用品 | 自転車カゴ、ブックエンドなど |
鋼製家具 | ロッカー、デスク、椅子など |
大型機械 | 農業機械、産業機器カバーなど |
製品例をご覧いただくとお分りいただけると思いますが、金属素材でもあまりにも大きなものや、鋳物のような重量物は粉体塗装の対象としては向いていません。必要条件の「被塗物の加熱」に難しさがあるからです。
被塗物の治具条件
被塗物を塗装する際は、吊り下げ(ハンガー)式での処理となります。被塗物をフックやハンガーなどで吊り掛けて、きちんとアースを取っていただければ静電気の力で粉体塗料が付着していきます。塗料が被塗物の裏側にもある程度回り込み付着しますので塗着効率も良好です。
ただし、ハンガー等の接点部分には塗料が付着しませんので、見えにくかったり影響のない箇所をひっかけるようにしてください。
塗装網等に置いて塗装する事もアースがきちんと取れていれば可能ですが、塗装網にも塗料が付着しますし、接点部分には塗料が付着しません。また製品の裏側まで一気に塗装できたりする静電粉体塗装のメリットを活かせません。更に塗装網が絶縁状態になると被塗物に静電気がたまり危険です。
※ハンガーも接点部分が絶縁状態になると同様の問題が発生します。
バッチ式、ライン式の塗装方式どちらも吊り下げ(ハンガー)式の治具を使用し粉体塗装を行いますので、吊下げ位置を決めたり治具の形状を工夫するなどの必要があります。
粉体塗装は奥が深いので、一度に説明しきれません。
今回は粉体塗装の導入を検討されるにあたり、まずは「前提条件」ついて説明しました!
次回は、塗料や塗装方法についてご説明します!
乞うご期待♫