【今月のお悩み】
新規事業で塗装を始めるために準備を進めていますが、先日の顧客監査にて静電気管理についていくつか指摘をされました。
しかし、知識が無いためどのように答え、対策すれば良いのかわかりません。
このまま対策できなかったらスケジュールが遅れてしまいそうです・・・!
一体どうしたらいいの~?!助けてぇ~、3Cラボ~!!
クリーン化オレンジ〜!
静電気管理のSOSをキャッチしたのだ!
顧客監査の指摘で困ってるみたいなのだ〜
静電気管理は知識が無いと対策できないことが多いからね。
おいらに任せて!
さっそく現場に行ってきま~す!
その頃、現場では・・・
顧客監査で色々言われたけれど、理由も良く分からなかったし
どうやって対策するのってこっちが聞きたいよ・・・
困ってるみたいだね!
静電気管理について知りたいのかい?
そうなんです。
静電気なんてちょっとバチッとするくらいでしょう?
対策ってそんな大げさな・・・
ちょっとちょっと!
どうやら静電気が恐ろしいってことを知らないみたいだね?
え?!静電気が?
あんな弱そうな電気でなにか起きるんですか?
人体に流れる時間が一瞬だからあまり強い様に感じないけれど、
実は静電気は重大事故を引き起こす可能性を秘めているんだ!
ヒェッ!それは恐い!
でも、知識もないしどうやって対策すればよいか分からないんです・・・
本当ですか?!
実は、分からない事ばかり聞かれて自信を無くしていました。
知識を付けてしっかり説明できるようになりたいです!
オレンジ
そうだね!
静電気管理の必要性と、対策の原理・原則をしっかり理解して
安全な現場を作ろう!
ぜひお願いします!
静電気はどうして起きるの?
空気が乾燥する秋~春は、服を着たときやドアノブを触ったときに「バチッ」とくることがありますよね?
皆さんもご存知の通り、これが静電気です。
この季節になると静電気ついて質問が多く届きますので、まずは発生の仕組みについて説明します。
全ての物質は「+(プラス)」と「-(マイナス)」の等しい電荷を持っています。ところが摩擦や剥離、人間の動きで言うと歩く・走る(衣服の摩擦)、椅子から立ち上がる(椅子から衣服が剥がれる剥離)などの動きをしたときに「-」の電荷を持つ電子が物質から物質へ移動する現象が起きます。
すると、物質内の電子に過不足が起こり、「-」または「+」の電気を帯びた状態になり、これを帯電、帯電した電気を静電気と呼びます。
その後ドアノブや車などの金属に触れると人に溜まっていた電気がドアノブへ向かって流れ、バチッとするのです。
人体と同様に工場内でも、置いてある物を移動したり、設備が動いたりする際に摩擦や剥離が起きると同様に静電気が帯電します。
静電気が引き起こす問題
静電気によって起きる重要な問題は、火災や粉塵爆発の原因にもなる静電気放電とゴミ・異物を付着させる静電吸引の2つです。
静電気放電(ESD:Electrostatic Discharge)
導電性の物体と地面を繋ぎ、静電気を逃す配線を「アース」と言いますが、このアースをしていない金属容器が帯電し、アースされている金属に近づくと金属容器に帯電した静電気が一気にアースされた金属に放電する現象が起きます。
これが静電気放電です。
静電気放電は粉塵爆発や火災の原因となることがあり、有機溶剤などの引火性のある化学品を取り扱う現場や、小麦粉や塗料に関わらず可燃性の粉体を扱う工場では注意が必要です。
そのため、使っている材料の最小着火エネルギーを知って静電気対策をする必要があります。
また、電子デバイスの場合は静電気放電が起きるとデバイスが破壊されてしまうので、静電気管理区域を設けて帯電電圧を100V以下に管理するなどの厳密な管理が行われています。
静電吸引(ESA:Electrostatic Attraction)
こちらは読んで字のごとく、静電気の力で色々な物が引っ張られる現象です。
皆さんも、冬場にズボンやスカートが足にくっついたり、ビニール包装が指から離れないといった経験があるかと思います。
これも静電吸引によるものです。
作業現場では、エアーシャワーの中、コンベア、作業台や見落としがちな壁へのゴミ・異物の付着要因となっています。
静電吸引によりオーバーヘットコンベアや天井にもホコリが付着 |
静電気を帯びた繊維ゴミは見た目が同じでも、「プラスに帯電しているもの」「マイナスに帯電しているもの」「帯電していないもの」があり、気流に乗って飛び回っています。
これらの符号が違う物体同士は引かれ合うため、例えば壁にゴミが付着し、ゴミ同士がくっつき巨大化すると、振動や自重、気流などの影響で突然落下し飛散します。
この静電気によるゴミは、壁に付着し大きくなり、床に落下し、飛散して再度壁に付着することを永遠に繰り返します。
空気が乾燥しているといたるところに静電気でゴミ・異物が付着するので注意が必要です。
静電気対策の基本
静電気が物質に溜まる理由は、その物質から電気が流れないためです。
静電気対策の基本は、ずばり“溜めない”という事が重要になります。
物の素材が絶縁体か導体かで対策方法が異なりますので、以下の点に注意してください。
樹脂などの絶縁体
- 導電性材料に替える。
- イオナイザーで除電する。
1.についてよく見かけるのは塗装ブース周辺で、塗料の付着防止などで養生を行っている光景です。
養生しているフィルムやシートがポリエチレンなどの絶縁性だと、導電床や導電性の壁にしていても意味がありません。
養生に使用する保護フィルムも導電性材料の入っている静電気対策品がお勧めです。
NCCで選定した専用プロテクトフィルムの使用事例 (壁面、回転台周辺) |
2.についてはイオナイザーなら何でもいいという訳ではなく、製品ごとにイオンバランス(オフセット電圧)と除電時間(静電気減衰時間)を管理しなければ、イオナイザーを使用しても逆に静電気が溜まってしまいます。
そのため、イオナイザーは除電方式や性能を確認して、現場の設置環境に合ったものを選ぶ必要があります。
また、メンテナンスを全くしないと針先の汚れが原因となって静電気が除電できなくなってしまいます。
針先に結晶のようなものが付いた状態になると、針先で起きるコロナ放電が不安定になってイオンの量が少なくなり、ひどくなるとイオンが出なくなってしまいます。
針先を定期的に清掃し、針も定期的に交換することで除電効果を維持した状態で長く使うことができます。針の清掃を行ってイオナイザーを長く使用しましょう。
金属などの導体
- アースに接続する。
- 等電位結合(ボンディング)をする。
塗装工程の様な有機溶剤を多く使用する現場では、金属製の作業台、容器や配管などはアースを取ることが基本になります。
これには個別にアースする方法と、アース接続された物に接続するボンディング(等電位結合)と言う手法があります。
アースと物体をつなぐアース線などの抵抗は1000Ω以下を目安につなぎますが、重要なことはアース線の断線、外れ、接触不良などの接続不良や接続忘れをしないことです。
作業台などを移動した場合は、「アース線も接続し直したか?」の確認を必ずしましょう。
また、素材に関わらず静電気対策できる方法もあります。
- アルコールなどで表面を拭き取る(アルコール拭きは一時的な効果に限られます)
- 湿度を高くする
- 水を撒く
簡単にできることばかりなので要チェックです!
なるほど!静電気管理の必要性と、モノの静電気対策方法が分かりました!
ですが、人自体が帯電する場合はどうすればよいでしょうか?
オレンジ
(ラボボス)
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