
静電塗装は、金属製品の塗装現場で起きる塗着効率の改善や手間の削減などといった課題の解決策として最適です。
しかし、静電塗装に欠かせない「静電気」によって仕上がり品質に影響がでてしまうことが!
ご相談者さんもどうやらこの静電気が原因でお悩みのようです。

静電塗装は静電気の力で塗着効率がよいので弊社でもスプレー塗装から切り替えているのですが、最近製品の裏側への回り込みがよくなくて・・・なぜなのでしょうか?

ムーダー
それはきっと静電気の帯電量が足りないからですね〜!
塗り残しを少なくするには、静電気を使用しないスプレー塗装の方がおすすめですよ~

う~ん、でも今までは問題なかったので何かトラブルが起こっていると思うのですが・・・

ムーダー
いいえ!やはり塗料をたっぷり使用して塗装する方が正確ですよ~ひひっ
(塗料の使用量が多くなるぞ~ひひっ)

そこまでおすすめされるなら、静電塗装はやめてスプレー塗装に戻そうかな・・・

ちょっと待ってぃ!
製品の裏側が塗装できていないのは静電気の力が足りないだけじゃないぞ!
アースや塗料の抵抗値が適切ではないかもしれないんだ!

そうなんですか?!盲点でした・・・
これからも静電塗装を続けていきたいので、ぜひ改善方法や注意点について教えてください!

ムーダー
あとちょっとだったのにぃ・・・
静電塗装をする前に抑えておきたいこと
静電塗装は、金属製品を吊り下げて塗装する場合に優れた塗装方法です。
静電気の力で付き周りがよく、塗着効率はスプレーと比較し20%ほど高いため塗料使用量を抑えることができます。
しかし、この静電塗装もその仕組みを十分に理解していないと、静電塗装特有のトラブルに直面することがあります。
そこで、静電塗装の基本的な原理から、現場でよく発生するトラブルの原因、そして具体的な解決策まで詳しく解説いたします。
静電塗装とは
まず、静電塗装の基本から確認していきましょう。
静電塗装とは、静電気の力を活かして塗装を行うことです。
通常のスプレー塗装では、製品に付着しなかった塗料はムダになってしまったり「オーバーミスト」としてゴミ・異物の原因となります。
しかし、静電気の力を利用することで、オーバーミストになるはずだった塗料も製品に引き寄せて付着させることができます。
これにより、塗料のムダを減らし塗着効率を向上させています。
また、パイプや網のような形状の製品でも、表面から塗装すると裏側にも塗料が回り込み塗着させることができます。
静電塗装ができる製品は、アース(接地)が取れる金属製のものか、導電性プライマーを塗って電気を通すようにしたものに限られます。
静電気の力を利用して塗装する静電塗装の仕組みはこちらのページで解説しているので、ぜひご覧ください。

静電気の力を活かした塗装方法を「静電塗装」といいます
静電塗装によるトラブル
静電塗装はすべての製品に対しできるものではなく、「塗料に静電気がかけられること」と「ワークにアースがとれていること」の2つを満たしていなければできません。
どちらか片方が欠けていては静電気の力を活かすことができず、通常のスプレー塗装と同様になってしまいます。
言い換えれば、静電塗装でトラブルが起こった場合、この2つのポイントが揃っていないことが疑われます。
では、この2つのポイントが揃わないとどんなトラブルが起こるのでしょうか?
- 被塗物の裏側への回り込みが悪い
- 同じハンガーに設置しているのに、ワーク毎に膜厚の差がある
- 被塗物の凹凸部にスケやタレが発生する
上記のようなトラブルが起こり、塗装品質に影響を与えます。
トラブル回避のための対策
どのようなトラブルでも、静電塗装の回り込み特性が機能していない可能性があります。
そこで、トラブルを防止する対策が必要となるため、今回は一般的な対策をご紹介します。
①ワークに施す対策
ハンガーのフック等が絶縁されていないか確認しましょう。絶縁されていると静電気がかからないため、塗料が付着しません。
ハンガー自体がアースされていないこともありますので、併せて確認が必要です。
②塗料に施す対策
塗料の抵抗値が適切であるか確認しましょう。抵抗値が適切でないと、付きまわり性に差が生まれます。
付きまわり性が悪い場合は抵抗値が高すぎる、良い場合は低すぎる可能性がありますので、専用の導電率計で塗料を測定し抵抗値が20~100MΩ程度であるか確認してみましょう。
抵抗値が高い場合は静電用シンナー等で抵抗値を下げ、低い場合はアルコール分等の導電性の高い溶剤をなるべく含まないシンナーで希釈することをおすすめします。

塗料の抵抗値が20~100MΩ程度であるか確認してみましょう
塗料が確実に付着するためには「抵抗値が低い方がいいのでは・・・」と思われがちですが、抵抗値があまりにも低すぎると塗料ホース内で電気が逆流し、感電や火災を起こす危険性があります。
通常は、塗装機の安全装置で通信エラーのメッセージが表示されるとともに電気を遮断するため安全に使用することができますが、そのような危険性があることも抑えておきましょう。
また、配管洗浄に使用するシンナーにアルコールが多く含まれていると通信エラーが発生する場合があるので、できるだけアルコール分が少ないシンナーで洗浄するようにしましょう。
さらに、塗料の抵抗値が低いと静電特性が効きすぎて、凸部に塗料が付着しすぎてしまう問題もあります。付着量が多いと塗料が垂れて不良になってしまいますので、塗装機の電圧値を下げて付きまわり性を調整しましょう。
それでもなお付着が多い場合は、その凸部の手前にタレ対策用のダミー治具を使用することで解決するケースもあります。

これらの対策は、現場でどのような塗装設備を使用しているかにより状況が異なりますので、一概にはこれらの対策だけで万全であるとは言えません。
現場に適した対策は近くの専門家、またはNCCまでご相談ください!

弊社でも教えてもらったトラブル解決方法を早速試してみようと思います!
解決方法の中のひとつに「静電用シンナー」の話題があったと思いますが、静電用シンナーって普通のシンナーと何が違うんですか?
初めて聞いたのでぜひ教えてほしいです!

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