脱炭素化に対応!炭化水素洗浄後の2つの乾燥方法とは?

金属加工現場で主流となっている炭化水素洗浄は、乾燥工程で一般的に真空乾燥や温風乾燥といった方法が用いられています。

お悩みさんの現場では比較的安価に導入でき乾燥時間が短いことが特徴の温風乾燥を採用しているようですが、どうやら最近話題の”ある課題”についてお悩みのようです。

一体どんなお悩みなのでしょうか?

 

相談者B

弊社では、製品を炭化水素洗浄後に温風乾燥しています。

温風乾燥は乾燥時間が短いので効率がいいのですが・・・

 

博士
(ラボボス)

おやおや、どうしたんじゃ。何かお悩みですかな?

 

相談者B

そうなんです。近年、地球温暖化の話題や企業のSDGsへの取り組みが活発化する中で、「脱炭素」というワードを耳にすることが多く、弊社でもどんな活動ができるのか検討を始めました。

 

 

博士
(ラボボス)

それは立派なことじゃ!

 

相談者B

ですが、温風乾燥は槽内に熱風を送るための熱風発生機やブロワーなどを長時間使用するため、間接的にですがCO2の排出が多い状況です。

納品先からも地球にやさしい方法で製品を製造してほしいと依頼されているので、どうにかいい方法はないでしょうか?

 

 

洗浄ブルー

そのお悩み、私にお任せください!

炭化水素洗浄というと温風乾燥や真空乾燥が主な乾燥方法ですが、実は他にもいくつか種類があり、脱炭素も光熱費削減も叶える方法があるんです!

 

相談者

えぇ!そうなんですか?!ぜひ教えてください!

 

洗浄ブルー

もちろんです!炭化水素洗浄の基本から脱炭素を実現する乾燥方法までご紹介します!

 

注目の炭化水素系洗浄剤についておさらい

3Cラボでも過去に取り上げている炭化水素系洗浄剤ですが、なぜ近年注目を集めているのでしょうか?

金属を腐食させにくく環境に優しい炭化水素系洗浄剤は、金属部品の脱脂洗浄用途で広く使用されるようになってきています。

現在使用されている炭化水素系洗浄剤は、単に原油を蒸留精製したものではなく、高度な精製処理を行ったものや化学的に合成したものが主流です。

その化学的行動から炭化水素系洗浄剤は下記の4種類に分類されます。

 

  • ノルマルパラフィン系
  • イソパラフィン系
  • ナフテン系
  • 芳香族系

 

ナフテン系炭化水素系洗浄剤は、洗浄力が高く比較的安価に入手できますが、臭気が強いため洗浄現場ではあまり使用されていません。

そこで、現在主流なのがノルマルパラフィン系やイソパラフィン系であり、下記のような特徴があります。

 

  • ノルマルパラフィン系単一物質であるため蒸留再生時のリサイクル性が高く、臭気も少なく性能面では申し分ないですが、イソパラフィン系より高価
  • イソパラフィン系比較的安価で臭気は少ないものの、洗浄剤の沸点範囲が広くノルマルパラフィン系と比較するとリサイクル性が少し劣り、廃液量が多くなります。

 

金属を腐食させにくく環境に優しい「炭化水素系洗浄剤」が、塩素系洗浄剤などの代替品として活躍しています。

 

炭化水素系洗浄剤の特徴

金属加工現場をはじめとした多くの現場で用いられている炭化水素系洗浄剤ですが、他の洗浄剤とどんな違いがあるのでしょうか?

 

下記の図は各種洗浄剤の特徴をまとめたものです。

 

  用途 法規則 毒性 溶解力 浸透性 乾燥性
水系

脱脂洗浄

水質汚濁防止法

下水道法

準水系

脱脂洗浄

フラックス洗浄

塩素系 脱脂洗浄 

PRTR法

水質汚濁防止法

安衛法有機則

発がん性
臭素系

脱脂洗浄 

フラックス洗浄

PRTR法

安衛法有機則

生殖毒性
フッ素系

脱脂洗浄 

パーティクル洗浄

 
炭化水素系

脱脂洗浄 

パーティクル洗浄

消防法

アルコール系

パーティクル洗浄

水置換

消防法

 

炭化水素系洗浄剤は他の洗浄剤と比較すると、金属への腐食性リスクが低いことから金属の脱脂洗浄等に優れており、毒性が低いことから人体や環境に害が少ないことが利点として読み取れます。

 

一方で、洗浄設備が比較的高価であり消防法に該当するため様々な規制を考慮しなければなりません。また、品質に関わる面では、溶解力、浸透性、乾燥性のいずれも中程度の評価です。

今回、お悩みさんが悩んでいる”乾燥”というポイントに着目すると、乾燥性が他溶剤系よりも低いことで製品の表面に乾燥不良が発生する恐れがあります。そうすると、後工程での不具合が発生してしまう場合があるため、高温下で短時間で蒸発させる温風乾燥や真空乾燥が主に選ばれます。

 

光熱費とCO2排出量を抑える乾燥方法

炭化水素系洗浄剤を用いた洗浄後の乾燥は、真空乾燥や温風乾燥などが一般的に用いられています。

短時間で乾燥させ生産性を上げるためには、製品表面に付着した洗浄剤を高温下で蒸発させないと乾燥できませんが、温度を上げる際にかかる電気代や排出されるCO2は少ないとは決して言えません。

 

昨今、これらの課題を解決する様々な技術の模索が進んでおり、洗浄後の乾燥工程においても以下のような技術があります。

 

①フッ素系洗浄剤を併用した乾燥時間短縮と熱量の削減

炭化水素系洗浄剤で脱脂洗浄した後、フッ素系洗浄剤を使用したベーパー(蒸気)洗浄で、製品に付着した炭化水素系洗浄剤を除去し洗浄乾燥する方法です。

炭化水素系洗浄剤を使用したベーパー洗浄乾燥方法より、フッ素系洗浄剤を使用したベーパー洗浄乾燥方法の方が消費電力を1/2~1/3程度に抑えることができるため、間接的にですがCO2の削減に貢献できるのと同時に光熱費の削減にも繋がります。

以前、「洗浄剤の二刀流は高効率×高品質の強い味方!」でも詳しく解説しましたので、ぜひそちらもご覧ください。

 

②熱源を使用せず遠心分離で完全乾燥

炭化水素系洗浄剤を使用した後、遠心乾燥槽を使用し乾燥させる方法です。

この際、遠心乾燥槽に大風量を取り込むことで、製品表面に付着した炭化水素系洗浄剤を除去し乾燥させることができます。

熱源を使用しないため、CO2の排出や光熱費の削減が期待できます。

 

相談者

こんな方法があったんですね!

現場でできる脱炭素への取り組みはほとんど思い当たらなかったのですが、相談してよかったです!

 

 

洗浄ブルー

技術が進み、お悩みに対し様々なアプローチがあります。

今後の選択肢のひとつとして役に立つかもしれません。

 

相談者

社内で情報共有するためにも教えてもらった2つの乾燥方法について詳しく知りたいです!

 

洗浄ブルー

承知しました!必殺技で解説します!

 

シーファー

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