精密加工部品の洗浄工程に携わるAさん。
元々炭化水素系洗浄剤を使用していましたが、乾燥に時間が掛かることから作業効率の悪さに悩んでいました。
また、設備も老朽化しているため、良い洗浄方法があれば切り替えたいと思っていますが、どんな方法が良いのかわからず・・・。
誰か教えて下さ~い!!
3Cラボにて・・・
洗浄ブル~!洗浄SOSをキャッチしたよ~!
炭化水素系洗浄剤を使っていて、乾燥時間のムダを無くしたいみたいなのだ~!
炭化水素系洗浄剤は洗浄力は高いけれど乾燥性が劣りますからね。
ダークムーダーに目を付けられないうちに行ってまいります。
そのころ現場では・・・
洗浄力も高くて液の再生もできるから、炭化水素系洗浄剤を使ってきたけど、
乾燥時間が掛かるから、少し受注が増えるだけで間に合わなくなってしまう・・・
今回は納期を伸ばしてもらったけれど、何とか改善したいなぁ。
お困りの様で・・・私にお任せくださいっ!
待てぃ!
ダークムーダーの好きにはしない!
げげっ!!出たなラボレンジャー、早過ぎる!!
まるであっという間に乾くフッ素系洗浄剤のように早い!
フッ素系洗浄剤?それを使えば良いんですか?
ダークムーダーの言葉にヒントが隠れていましたね。
ただ、洗浄力を落とさず、炭化水素系洗浄剤と
フッ素系洗浄剤の良いとこどりをする方法があります!
本当ですか?!一体どんな方法なんです?!
これです!
コ・ソルベントビーム!!!
うぎゃー!!
次はこうはいかないぞ!!(今回特に何もしてないけど~っ!)
凄い威力なのだ!
綺麗さっぱり見えなくなっちゃったのだ。
とても頼もしいですね!
なんだか、ビームの跡がキレイになって、もう乾いています。
そう、コ・ソルベント洗浄とは炭化水素系洗浄剤の洗浄力の高さと、
フッ素系洗浄剤の乾燥性の高さを併せ持つ洗浄方法なんです!
これなら品質を維持したまま作業効率を上げられますよ!
本当ですか!ぜひ教えてください!
2つの洗浄剤の良いとこ取り!コ・ソルベント洗浄とは
デメリットが一つもない洗浄剤があれば誰だって使いたいと思いますが、実際は多かれ少なかれ欠点が存在するもの。
しかし、コ・ソルベント洗浄なら条件次第でデメリットを無くすことが可能になります!
今回はその特徴について解説致します。
コ・ソルベントとは?
コ・ソルベント(co-solvent)という言葉は中々聞きなれないと思います。
それぞれ、コ(co)は「共に」、ソルベント(solvent)は「溶剤」という意味で、コ(co)+ソルベント(solvent)=2種類の溶剤を使う洗浄を表します。
具体的には、洗浄とリンス・乾燥で2つの溶剤を使い分ける洗浄方法で、例えば洗浄工程には洗浄力の高い炭化水素系洗浄剤を使用し、リンス工程には乾燥力の高いフッ素系洗浄剤を用いる方法です。
この方法を用いることで、高品質かつ高効率な洗浄を行うことが可能となり、主に以下の機械加工部品や電子部品の洗浄に適しています。
- 精密加工部品
- プレス部品
- アルミダイキャスト部品
- 接点部品
- HDD部品
- 電子基板プラスチックス洗浄
今回のお悩みである、炭化水素の洗浄時間を解決するだけではなく
- 塩素系からの切替えをしたいが危険物を使用したくない
- 水系は廃水が出るので溶剤を使用したい
- 洗浄機を新規で設置したい
上記の様に様々なお悩みに最適な洗浄方法です!
2つの溶剤
コ・ソルベント洗浄に用いられる炭化水素系洗浄剤とフッ素系洗浄剤については、過去のズバリ解決!3Cラボでも解説致しましたが、ここでは簡単にそれぞれの特長について紹介します。
炭化水素系洗浄剤
メリット
- 洗浄力が高い
- 金属への腐食性が低い
- 毒性が低く、環境関連の法規制にほとんど該当しない
- 液単価が比較的安価
- 設備導入費用が比較的安価
- 蒸留再生可能
デメリット
- 乾燥性が悪い
- 引火性があり、設備に防爆仕様が必要
- エネルギーコストが大きい
炭化水素系洗浄剤は、何と言っても洗浄力の高さとコスパの良さを併せ持つ点が最大の強みで、近年広く使用されています。
フッ素系洗浄剤
メリット
- 不燃性
- 人体への毒性が低い
- 乾燥性が良好
- 表面張力が小さく、浸透性が良いため細部の洗浄が可能
- 樹脂へのケミカルアタックが極めて少ない
- 蒸留再生が可能
- 比熱、蒸気潜熱が小さいためエネルギー負荷が少ない
デメリット
- 溶解力が低い
- 液単価が高価でランニングコストが大きい
- 再生ロスが大きい
フッ素系洗浄剤の一番のメリットは、強制乾燥させなくても一番早く乾くという点で、高単価の精密部品洗浄等に使用されます。
コ・ソルベント洗浄の特長
さて、みなさんも気になっているでしょう「コ・ソルベント洗浄のメリットとデメリットは?!」についてお話します。
上記で、2つの溶剤のメリット・デメリットをお話ししましたが、双方のデメリットをカバーしあう事ができるのがコ・ソルベント洗浄の特長です。
一つずつ見ていきましょう。
あらゆる汚れの洗浄・除去が可能
溶解力が弱いというフッ素系洗浄剤のデメリットを、洗浄工程に炭化水素系洗浄剤を用いることでカバーし、シリコンオイル、ワックス、フラックス等、炭化水素が得意な油脂の洗浄をはじめ部品に付着したあらゆる汚れの洗浄・除去を可能にします。
洗浄時間の短縮
揮発性が高いフッ素系洗浄剤を使用しリンスをすることで、従来の炭化水素系真空洗浄乾燥機に比べ、1サイクルの時間を大幅に短縮できます。
具体的には、炭化水素真空ベーパー方式は1サイクル5~6分の処理時間なのに対して、コ・ソルベント洗浄は1サイクル3分程で完了します。
環境負荷の低減が可能
リンス工程に沸点の低いフッ素系洗浄剤を使用することで、従来の炭化水素系真空洗浄乾燥機に比べ、大幅な省エネルギー効果が得られます。
具体的には、炭化水素系洗浄剤の沸点は約170℃なのに対し、フッ素系洗浄剤は40~50℃であるため、常温から沸点まで加熱ベーパー洗浄した場合、必要な熱エネルギーが格段に少なくて済みます。
また、水系洗浄剤からコ・ソルベント洗浄に切り替えた場合、洗浄剤をリサイクルすることが可能になり、廃液量の削減と環境負荷の低減が実現できます。
すみません、一つ質問なのですが・・・
炭化水素系洗浄剤で洗った後、そのままフッ素系洗浄剤のリンス工程に移って大丈夫ですか?
2つの液が混ざっても問題ないのか気になります。
全く問題ありません!
フッ素系洗浄剤は「製品に付着した汚れを除去する」洗浄剤ですので、
付着した炭化水素を洗い流すのに最適です。
粘性の高い油やグリス等も、炭化水素で洗浄することでより粘性の低い
炭化水素の油膜を作り、フッ素系洗浄剤で洗浄を可能とする役割もあります。
さらに、「洗浄剤は混合しても基本的に沸点差で分離可能」なため安心してください!
コ・ソルベント洗浄のデメリットを強いて挙げるとすれば、
- フッ素系洗浄剤の液単価が高額
- 炭化水素系の洗浄機と比較すると設備費用が高くなる
となり、フッ素洗浄同様、コ・ソルベント洗浄もランニングコストに見合う単価のワーク洗浄を検討する必要があります。
なるほど!
ちょうど設備も古くなっていましたし、コ・ソルベント洗浄への切替えを検討してみます!
では、検討材料になるようコ・ソルベント洗浄の具体的な洗浄システムについて
必殺技のページでご説明いたします!
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