金属ワークの塗装工程を担当しているのですが、組立工程の担当者から「ネジを締めるとネジ穴周辺の塗膜が剥げてしまうものがある」と報告を受けました。
ですが、私は指示通りに作業をしているし塗膜も硬化しているから問題となる点はどこにもありません。
それなのに塗膜の剥がれは一向に減らないようで、組立工程の人と険悪なムードに・・・。
塗装工程では指示通りに作業を行っているから問題点がないのに・・・誰かこの状況を解決してくださ~い(泣)
博士ぇ~、悲しい気持ちと助けを求める声をキャッチしたのだ。
組み立てると塗膜が剥げてしまうけど、塗装はしっかりできてるなんて、何がいけないのかな?
喧嘩しちゃう前に助けてあげて欲しいのだ~!
お互い自信を持って仕事をしているからこそ時には対立することもあるじゃろうが、塗装不良は放っておけんのぅ!
塗装グリーンよ、今すぐ現場に向かいこのお悩みを解決して来るのじゃ!
承知しました!
自分の塗装愛と知識で必ず解決してきます!
その頃、現場では・・・
また塗膜が剥がれたって・・・
これだけしっかりやってるのに、何がいけないっていうんだ!
塗装グリーン参上!
その塗膜剥がれは、あなたの塗装作業が問題ではないと思いますよ。
塗装前のワークを見せてください!
やっぱり塗装作業には問題ないですよね!塗装前のワークですか?
こちらですが、ゴミや油分はしっかり洗えてると思いますよ。
なるほど、見た目は綺麗に見えますね。
ですが、前処理工程に問題があるかもしれません!
金属塗装の仕上がりは前処理にかかっていると言っても過言では無いのですが、
前処理をする3つの目的を知っていますか?
前処理の3つの目的ですか?!
ゴミとか切削油を除去するためですよね、あと2つはわかりません・・・
それならば、自分が前処理の目的と重要性についてとことんお教えしましょう!
前処理について知ることで、塗膜剥がれの対策に活かすことができるはずです!
塗装技術に文句を言われたと思って悔しかったのですが、前処理の事まで考えていませんでした!
知識を得て改善していきたいと思います!
前処理とは・・・
完璧な塗装とは、ゴミブツが無く、きれいで高品質な塗膜が製品を覆っている状態ですが、素材の前処理が不十分だと塗膜が剥がれたり錆などが発生してしまいます。
前処理とは、塗装や加工といった本工程の前に行う処理の事を言います。
良い塗装を行うためには塗装前に素材の下地を、塗装に適した状態に処理する必要があります。
塗装をお化粧に例える事がありますが、前処理はスキンケアに例えられ、人間の肌のように塗装の仕上がりも前処理(スキンケア)次第で大きく変わってしまいます。
人間の場合、洗顔をして化粧水で肌を整えた後、乳液等で保湿をしますが、前処理もこれと同様の事をしています。
(女性にはなじみ深いスキンケア。最近は男性にも増えていますよね。)
前処理を行う3つの目的
一般的に前処理の対象は、金属素材になります。
特に身近なところで多く使われている「鉄」は、常に錆の影響に悩まされます。
しかし、前処理をすることで錆の影響を受けにくくし、塗料の密着性を向上させる事で美しい塗膜を維持することができるのです。
上記で、「前処理はワークのスキンケア」とお伝えしましたが、その目的は次の3点になります。
- 油や汚れなどの不純物を取り除く
- 塗料との密着性を向上させる
- 素材の酸化を防ぐ(金属素地)
1つずつご説明します。
1. 油や汚れなどの不純物を取り除く
塗装をする面に油や汚れが付着していた場合、塗料がきれいに密着しません。一見密着しているように見えても、汚れの上に浮いた状態で塗膜となっているため、剝がれやすくなってしまいます。
また不純物が酸や塩などの酸化を促進させる物質を含んでいる場合、塗膜と素材の間で一気に錆が広がってしまいます。
それらを防ぐため、脱脂力の高いアルカリ性の脱脂剤や界面活性剤を含んだ脱脂剤で洗浄をして除去します。
2. 塗料との密着をUPさせる
素材表面が平滑すぎると塗料の密着が確保しにくくなります。
ですので、塗膜が様々な状況でも剥がれないよう塗料が食いつく足場となる被膜を作ります。
その被膜を作る代表的なものが“リン酸亜鉛皮膜”などは表面に細かな結晶を作るので、塗料の密着性が向上します。
3. 素材の腐食を防ぐ(金属素地)
金属素材の一番の大敵は錆です。
素材自体を錆びさせないために安定的な皮膜を作り、金属素材の腐食を防ぐことができます。
また、塗膜に傷などがついてしまっても素材に錆が広がるのを防ぐ効果もあります。
この3つの目的を達成するためには、処理の順番や液濃度管理、液温と処理時間の管理が重要になります。
また、塗装の前処理は水を使用したプロセスとなるため、処理後の水切り乾燥や、すすぎ水の排水処理などをきちんと行う必要があります。
これらを管理することで、塗装の下地として最適な前処理をおこなうことが出来るのです。
今回のお悩みは、これらの前処理がきちんとできていなかったことが原因でネジ穴付近の塗膜が剥がれてしまっていたようですので、高品質な製品にするためには前処理も含めて全ての工程で要因がないかを探ってみてください。
前処理にはさらに種類があり、得られる効果も異なります!
そのため求められる効果に合わせて処理をする必要があるんです!
そうだったんですね!
自社にあった前処理方法を検討したいので、教えてください!
もちろんです!必殺技で解説しましょう!
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