万能は存在しない?!工業用洗浄剤の種類と特徴を徹底解説

メッキ前製品の脱脂に水系洗浄剤を使用している相談者さんは、同僚から撥水加工された製品へ使用する洗浄剤について相談を受けました。

現在使用している洗浄剤で高い洗浄品質を得ていることから水系をおすすめしたのですが、どうやらイマイチだったようです。

”洗浄剤”ならどんな汚れや製品に対しても効果があるものではないのでしょうか?

また、何でも洗浄できる洗浄剤はあるのでしょうか?

 

相談者B

メッキ加工をする前に現在使用している水系洗浄剤を同僚に紹介したのですが、どうやら洗浄品質が良くないようで正直驚いています。
洗浄剤であればどんな汚れに対しても効果があると思っていたのですが・・・

 

 

ダーク
ムーダー

おやおや、洗浄剤についてお悩みのようですね。
洗浄品質が良くないのはズバリ!洗浄剤が原因ではなく、洗浄方法が問題なんですよ~洗浄剤はどんな汚れも落としますから~ヒヒッ
(どんな汚れも落とせる万能洗浄剤なんてないけど、このままいけば大量の洗浄剤のムダとコストのムダが生まれるぞ~ヒヒッ)

 

相談者A

洗浄方法!そこまで考えていませんでした。
同僚にもこの情報を共有して水系洗浄剤を引き続き使用しま・・・

 

洗浄ブルー

待て!!
ダークムーダーが言うように、適切な洗浄方法を選んでいない場合もありますが、今回は適切な洗浄剤を使用していないことが原因です。
すべての汚れを除去できる万能な洗浄剤は存在しませんよ!

 

相談者

えぇ!そうなんですか?!
洗浄剤であれば様々な汚れや製品に対しても使用できると思っていました。
正しい洗浄剤の知識を知りたいので、ぜひ教えてください!

 

洗浄ブルー

もちろんです!工業用洗浄現場で使用されている主な洗浄剤について詳しく解説します!

 

ダーク
ムーダー

くぅ~、大量のムダ発生まであと一歩だったのに・・・
次は負けないぞ~!

 

洗浄剤の選び方

製品に付着している汚れを洗浄する場合、化学的要素物理的要素を組み合わせて洗浄作業が行われています。

これは、付着している汚れ(化学物質)に適した洗浄剤を選び、製品の形状、洗浄時間、求める洗浄品質といった条件に沿った設備(物理機構)を選び、作業を行うということです。

 

求める洗浄品質を実現するためには適切な洗浄剤や洗浄設備の選定が重要となりますが、今回は「洗浄剤」に着目していきましょう。

 

工業分野の洗浄工程では様々な洗浄剤が使用されていますが、どのように使い分けているのでしょうか?

洗浄剤は物性や成分の違いにより、有機物を溶かしやすいものや乾燥性が良いもの、無機物を剥離させやすいものなど様々な特徴があります。

これらを使い分けるには、洗浄したい汚れに見合った洗浄剤を選定することが必要です。

また、洗浄剤によっては毒性があるもの、引火性があるもの、環境負荷物質が含まれているものもあるため、使用中の安全対策や使用後の処理方法なども考慮し選定しなければなりません。

 

相談者

現場に配属されたときに使用していた洗浄剤を当たり前に使用していたので、洗浄剤の種類ごとに違いがあるなんて知りませんでした。

この機会にどんな洗浄剤があるのか学びたいです!

 

 

洗浄ブルー

お任せください!

 

洗浄剤の種類

一般的に市場で多く使用されている洗浄剤には、水系や溶剤系があります。

今回はこの2種類の洗浄剤に注目しご紹介します。

 

水系洗浄剤

水系洗浄剤は、家庭で使用する中性洗剤の工業用途版とイメージすると分かりやすいかと思います。

油性・水溶性の汚れに対して有効で、金属加工の脱脂、メッキ前の脱脂、レンズ製造工程などの現場で多く使用されています。

洗浄剤使用後は水によるすすぎを行い、エアブローや温風などで乾燥させます。

 

水系洗浄剤はさらにアルカリ性・中性・酸性の3つのタイプに分かれており、やはり汚れに応じて使い分けがされています。

 

例えば、油汚れを洗浄するにはアルカリ性や中性洗浄剤が多く使用されています。

頑固な油汚れを洗浄する場合はアルカリ性洗浄剤を使用する場合もありますが、洗浄対象となる製品を腐食・変色させてしまったり、皮膚刺激性物質であることから廃棄の際にph調整など手間がかかったりします。

 

中性洗浄剤は、界面活性剤を使用し油汚れを洗浄しています。

界面活性剤とは本来混ざり合わない油を水と混ざりやすくする洗浄剤の原料です。

金属や樹脂製品全般へのアタックも少ないため、一般的に軽度な油汚れの洗浄に使用されます。

 

油汚れに対して効果を発揮するアルカリ性・中性洗浄剤とは異なり、酸性洗浄剤は金属表面のさび落としなどに使用されることが多く、廃棄する際はph調整が必要となります。

 

油汚れの洗浄にはアルカリ性や中性洗浄剤が使用されています

 

 

溶剤系洗浄剤 

溶剤系洗浄剤も水系洗浄剤同様にタイプがあり、大きく分けると可燃性溶剤と不燃性溶剤に分類することができます。

さらに、それぞれのタイプの中でも細かく洗浄剤の種類がありますので、今回は従来より多くの現場で使用されているものや近年注目を集めているものをピックアップしてご紹介します。

 

 

〇可燃性溶剤

可燃性溶剤の洗浄剤には炭化水素系とアルコール系などがあります。

 

炭化水素系洗浄剤は、油脂類との相溶性が良いため金属部品の脱脂洗浄に使用されており、近年では人体や環境への毒性や法規制の厳しさが懸念されている塩素系溶剤や臭素系溶剤の代替として広く使用されるようになってきています。

しかし、引火性液体であるため使用する場合は管轄の消防署への確認が必要であり、洗浄を目的とする設備の設置は基本的に防爆構造にすることが望ましいです。

 

アルコール系洗浄剤は毒性が比較的低く、人体に対して優しいことが特徴です。

また、水と相溶するため、水洗後の水置換などに用いられることが多いです。

しかし、炭化水素系洗浄剤と同様に引火性があり危険物であるため、作業上の安全配慮や防爆仕様の洗浄装置が必要です。

さらに、揮発性が高く乾燥性に優れていますが、蒸気が現場に充満しないよう十分な換気対策も必須です。

 

両洗浄剤とも引火性液体であるため、安全配慮や防爆仕様の洗浄装置が必要です

 

 

〇不燃性溶剤

不燃性溶剤には、塩素系・臭素系・フッ素系などの洗浄剤があります。

 

塩素系洗浄剤は、溶解力が高く金属部品の脱脂洗浄に使用されています。

また、他の有機溶剤系洗浄剤と比較しても安価なことや、蒸発速度が速いため乾燥性に優れていることがメリットです。

一方で発がん性の疑いのある物質が多いなど、人体に有害で法規制が厳しく良くないイメージもありますが、法令を順守し正しく使用すれば今後も使い続けることが可能な洗浄剤です。

 

臭素系洗浄剤は、浸透性が高く油汚れに対する溶解性が高いため、金属部品の脱脂洗浄に使用されます。

不燃性であるため蒸留再生が可能であり、ランニングコストが抑えられます。

塩素系洗浄剤と同じ洗浄機を使用できることもあり、塩素系より高価であったものの一時期切り替えが進められましたが、生殖毒性があることが認められてからは臭素系洗浄剤の採用を検討されるお客様は減少傾向にあります。

 

フッ素系洗浄剤は、溶解力はそれほど高くありませんが、不燃性で人体に対する安全性が高く、乾燥性・浸透性に優れ、樹脂製品等へのケミカルアタックが極めて少ないことから、精密洗浄や光学部品、プラスチック、プリント基板の洗浄用途に幅広く使用されてきました。

しかし、オゾン層を破壊してしまう問題から過去に幅広く使用されていたCFC-113やHCFCといったフッ素系洗浄剤は全廃となっています。

現在はHFC、HFE、HFOなどがありますが、HFCは地球温暖化対策推進法に該当することから、条件に合うか検討し使用することは重要です。

 

 

  用途 法規制

プリント

基板

水系

脱脂洗浄

水質汚染防止法

下水道法

炭化水素系 脱脂洗浄 消防法
アルコール系

パーティクル洗浄

水置換

消防法
塩素系 脱脂洗浄

PRTR法

水質汚染防止法

安衛法・特化則

臭素系

脱脂洗浄

フラックス洗浄

PRTR法

安衛法・特化則

フッ素系

脱脂洗浄

パーティクル洗浄

 

 

 

洗浄ブルー

洗浄剤の用途や特徴を一覧にしたこの表で、自社に最適な洗浄剤をぜひ見つけてください!

 

洗浄効果を上げるためには

汚れに適した洗浄剤を選定できたら、さらに洗浄効果を上げるために物理的要素を選定します。

洗浄工程で活用されている物理的要素は、超音波、揺動、回転、噴流、バブリング、高圧ジェット、シャワー、ブラシなどがあります。

洗浄後の品質、洗浄装置の設置スペース、洗浄時間など条件に合わせて選定する必要があります。

 

相談者

洗浄剤はこんなに種類があるんですね。同僚にも共有し、製品の汚れに適した洗浄剤を見つけます!
また、洗浄効果を上げるために物理的要素も同時に検討していこうと考えていますが、超音波やシャワーなど分からない要素もあるので教えてほしいです!

 

 

洗浄ブルー

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必殺技で詳しく解説します!

 

シーファー

洗浄剤や洗浄設備の選定についご不明点やお困りごとがあれば、こちらよりお気軽にご相談してほしいのだ~

 

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