クリーンルームで製品の組み立てを行っている相談者さんは、異物付着による不良を減らすため静電気対策や日々の清掃など様々な取り組みを行ってきましたが、なかなか減らず頭を抱えています。
一体何が原因なのでしょうか?
異物付着による不良が続いており、様々な対策を行ってきましたが、いまいち効果がありません。
おや~それは困りましたね~
わたくしがクリーンルームをチェックしましょう!どれどれ・・・
おや、クリーンウエアが汚染源となっていますね!
ええ!このクリーンウエアは新品なのでそんなはずはありません!
それはグレードの低いウエアだからです!
ワタクシがオリジナルで作り上げたハイパークリーンウエアなら、安心安全。
今ならお買い得価格でご提供いたしますよ~、ヒヒッ!
う~ん、今のクリーンウエアより高いなぁ~
でも、不良の削減を考えれば必要なコストだからしょうがない、試してみようかな・・・
ちょっと待ったぁ〜!
クリーン環境で真空包装していないクリーンウエアは新品でも汚染源となるから、重要なのはウエアのグレードよりも管理方法だよ。
え、ウエアの質よりも管理方法が重要なんですか?
そう、クリーンウエアを新しく購入しなくても汚れをリセットできる、”アレ”をすれば汚染源となることを避けられるんだよ~!
汚れをリセットできる”アレ”ってなんですか?!
ぜひ教えてください!
キィーッ!また邪魔をしおって・・・
次こそ覚えておれー――――ッ!!!
「発塵源=人間」!?汚染させない対策とは?
以前、『「クリーンルーム=キレイ」は間違い!不良防止を正しい清掃で!』において、クリーンルームは、
- 重力の影響で異物が床に溜まる
- 静電気などで異物が壁や天井に付着する
- 持ち込む資材などに異物が付着している
上記のような原因から汚染されてしまうため、定期的な清掃できれいに保つ必要があると学びました。
このようなクリーンルーム内に存在する異物の50~60%は、繊維クズや皮脂・毛髪などの人由来のものであると言われています。
つまり、人間は「移動する発塵源」と表すことができますね。
人間を発塵源としないため、一体どんな対策ができるのでしょうか?
クリーンウエアとは
製品やクリーンルーム・クリーン環境の汚染原因を「人間」としないために、クリーンウエア(防塵衣)の着用が重要です。
発塵が無いという意味で「無塵衣」などと表現されることもありますが、無塵という言葉は表現として正しくなく、NCCではあくまでも汚染を防ぐということから「防塵」が表現として正しいと考えています。
クリーンウエアを着用することで、1/10~1/100程度まで発塵量を減らすことができるというデータもありますが、人間自体は無塵には程遠い非常に大きな発塵源であることには変わりはなく、単にクリーンウエアを着用すれば良いというわけでもありません。
クリーンウエアはあくまでも機械設備と同様にハード面と捉え、管理の部分にあたりソフト面からのアプローチも合わせて検討することが異物対策では重要になります。
クリーンウエアの汚染度
実際、使用したクリーンウエアはどの程度汚れているのでしょうか?
作業や環境由来の異物によって外側がどんどん汚染されていくのと同時に、内側は人間からの発塵で汚染されていきます。
サイズが違うにせよ、人間からの角質細胞脱落数は1日あたり15億個とも言われ、直接肌に触れる可能性があるクリーンウエア内部はそれだけ汚染された箇所ということです。
技術情報協会が発行している「最新クリーンルーム運転管理ノウハウ集第3章」によると、実際に6日間使用したクリーンウエアをタンブリング試験機で調査した結果、0.1μm以上の異物が約10,000個も付着していたそうです。
また、冒頭でお悩みさんがダークムーダーにクリーンウエアが汚染源だと指摘されていましたが、新品だから異物付着がないというわけではありません。
クリーンウエアは一般環境下で製造されているためゴミ・異物が付着し、さらにプラスチックの袋で梱包するため空気で汚染されてしまいます。
クリーンウエアクリーニングの重要性
クリーンウエアで異物の発生を防いでいても、これだけ汚染されていては必然的に不良が発生してしまいます。
そこで、クリーンウエアを定期的に綺麗な状態へリセットする必要があり、その役目を果たしているのがクリーンウエアのクリーニングです。
このクリーニングは基本的にクリーンクリーニングを推奨していますが、コストや管理の面からどうしても難しい場合があると思います。
そこで、クリーンクリーニングとその他の方法についてメリットとデメリットをまとめました。
メリット |
デメリット |
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①クリーンクリーニング 【推奨】 |
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②一般クリーニング |
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③自社クリーニング |
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クリーンクリーニングを行うことにより、クリーンウエアに付着した異物を1/10以下に減らせると言われており、実際にNCCで行った粗大粒子のスタンプ試験では、未洗浄のクリーンウエアに付着していた約550個の粗大流子が、クリーニング後は約50個と1/10以下まで減少する結果となりました。
新品だから異物付着が無いわけではないと説明した通り、新品のクリーンウエアも何も対処せず着用しクリーンルームに入室してしまうと汚染源になる可能性もあるよ!
だからこそ、NCCでは新品購入後に一度クリーンクリーニングすることを推奨しています!
ただ、クリーンクリーニングは有効である一方、専用設備の超純水プラントを伴うので一般クリーニングよりコストがかかる傾向にあります。
その点がネックとなり、一般クリーニングや自社クリーニングを選択せざるを得ない場合もあるかと思います。
自社クリーニングとは
クリーンクリーニングや一般クリーニングは効果があることは分かっていても、コスト面や汚れが強いウエアなどではなかなか実施できない現場も少なくありません。
そこで、クリーンクリーニングが難しい場合、工夫しながら自社で洗濯することも可能ですのでそのポイントをご紹介します。
自社クリーニングで工夫が必要なポイント
では、自社でクリーニングを行う際にどんな点に注意する必要があるのでしょうか?
自社クリーニングは、家庭用洗濯機を用いて同じように洗濯しますが、下記ポイントが一般的な洗濯とは異なりますので要注意です。
- 液体洗剤を使用
粉洗剤は完全に溶けない場合が多く、粉末がウエアに付着し異物となるため、液体洗剤の使用を推奨しています。 - 洗い回数ではなくすすぎ回数に注力
水ですすぐ回数が多ければ多いほど付着した異物が洗い流せる確率が上がります。 - 乾燥はクリーンストッカーなどのクリーン環境下で実施
せっかく綺麗な状態に洗濯しても、乾燥機で乾燥させると静電気で繊維ゴミが付着し、外干しをすると花粉や大気中のゴミが、室内干しでは繊維ゴミなどの異物が濡れた状態の時に大量に付着し、クリーンな状態には全くなりません。
必ず、クリーンな環境下で乾燥させましょう。 - 洗濯機で他の物は洗わず、クリーンウエア専用にする
発塵のある布と一緒に洗濯すると確実に布繊維がウエアに付着し、洗濯機自体も汚染されてしまいます。
クリーンウエア専用洗濯機とすることで洗濯による異物付着を防ぎましょう。
近年自動化も進んできていますが、現在も多くの現場で製品に最も近づくのは人間です。
その人間が汚染されていては製品不良が発生するのは必然です。
今一度、クリーンウエアの管理に注目し、再確認してみてはいかがでしょうか。
クリーンウエアを着ていれば問題ないと思っていましたが、管理不足によって異物不良を引き起こしていたとは想像もつきませんでした!
教えていただいたポイントを忘れず、早速クリーンクリーニングを社内に提案しようと思います。
そこで、クリーンクリーニングについてもっと教えてもらえませんか?
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