塗装現場など、有機溶剤や可燃性の粉体を取り扱っている環境では火災や爆発のリスクを減らすことは重要です。
静電気で起きる事故を予防するために、最小着火エネルギーについて解説します。
最小着火エネルギーとは
塗料や溶剤などは、容器に移し替えたり、撹拌することで帯電します。
また、容器が金属でもアースしていないと帯電します。
例えば下記のイラストのように、アース線が断線し帯電したドラム缶にアースされている一斗缶が触れると、一気に放電する現象が起きます。
もし可燃性溶剤が揮発したミストや粉塵が周囲に充満している場合、放電された静電気により着火し、火災や爆発など恐ろしい事故を引き起こします。
この時、ドラム缶に帯電していた静電気が持つエネルギーを静電エネルギーと呼びます。
静電エネルギーは下記の計算式で求めることができます。
W=1/2×QV=1/2× CV2
- W;静電エネルギー(単位J:ジュール)
- Q;帯電電荷(単位q:クーロン)
- V;帯電電圧(単位V;ボルト)
- C;静電容量(単位F;ファラッド)
一方、可燃性の溶剤が揮発したミストや粉塵は、物質の種類によって着火するのに必要なエネルギーが異なります。
その着火する最小の静電エネルギーのことを最小着火エネルギー(MIE=Minimum ignition energy)と呼びます。
たとえば、トルエンやメタン、プロパンなどの炭化水素系の最小着火エネルギーは0.2mJ(mJ=ミリジュール、1Jの10⁻³)ですので、人の静電容量を200pF(pF=ピコファラッド、1Fの10⁻¹²)として静電エネルギーの計算式に当てはめて計算してみると、
0.2×10⁻³=1/2×200×10⁻¹²×V²
V=1414.21356・・・
つまり、人が約1.4kV(kV=キロボルト、1Vの10³)以上帯電して、アースを取っていない金属容器でトルエンなどを扱うと発火事故の危険性があるということになります。
人の動きによって起きる静電気は1kV~10kVほどなので、静電気対策をしないと事故が起きる可能性があるという事が分かります。