エアロックとは、気圧の異なる場所を人や物が移動する際に、隣り合う室内の圧力差を調節する機能のことです。
クリーンルームの出入口に設置されている「エアーシャワー」や「パスボックス」などがエアロック設備になります。
クリーンルームが陽圧になっている状態で、ドアを開放することによってキレイな空気が抜けてしまうことを防ぐために考案されました。
身近な事例として、東京ドームを考えて見ましょう。
東京ドームは、中の気圧を高くしてドームを空気で膨らませている特殊な構造になっています。
出入口の扉が回転ドアになっているのですが、回転ドアは外と中の空気が入れ替りにくい構造になっており、これもエアロックの一種です。
野球などのイベントが終わり観客が一斉に帰る時は、エアロックになっていない「バランスドア」が開くので出口付近で強い風を感じます。
また、東京ドームは300Pa程度の陽圧になっているそうですが、一般的なクリーンルームは10Pa程度の圧力差を付けるので、1枚ドアを開閉しても体感することは難しいですが、エアロックが無いと外気と一緒にゴミ・異物がクリーンルームに入り易くなる事は間違いありません。
エアロックは、クリーンルームの4原則の1つ目『持ち込まない』のために重要な機能です。
それでは、エアロックの代表的な事例を2つ紹介します。
エアーシャワー
エアーシャワーはクリーンルームの出入り口に設置され、作業者や搬入物に付着したゴミ・異物をクリーンルーム内に持ち込まないようにする設備です。
これを使用する目的は3つあります。
作業者のクリーンウェアに付着したゴミ・異物の除去
クリーンウェアに付着したゴミ・異物を風速20m/秒以上のエアーによって吹き飛ばし、そのゴミ・異物をフィルターによって集塵します。
一般的な除塵効果は約40%程度です。
エアーシャワーの除塵効果を、落下塵カウンターを使ってスタンプテストで評価してみました。
クリーンウエアに付着している10µm以上の「粗大粒子」をエアーシャワーを行う前後で比較してみると、50µm以上の粒子は約40%、50µm以下の粒子は20%程度の除去率と言う結果になりました。
エアーシャワーの除去効果を過度に期待せず、クリーンウエアをクリーニングに出したり、コロコロなどの除塵用品を併用することをお勧めします。
エアーロック効果
クリーンルーム内のキレイな空気と、クリーンルーム外の空気が混ざってしまわないよう遮断することがエアーロック効果です。
そのため、多くのエアーシャワーには両方のドアが同時に開かないようインターロック機能が付いています。
ドアを同時開放させない事で、クリーンルーム内と外の空気の遮断と、クリーンルームの陽圧の維持を行っています。
エアーロック室になることで、外からエアーシャワーに持ち込まれた空気をフィルターで除去してキレイな空気にしています。
このことは意外と意識されていない事が多いですがとても重要です。
教育効果
隠れた効果として、エアシャワーを通るという工程を通じ、クリーンルーム内と外の意識を変えるという効果もあります。
これは一種の『教育効果』と言えるでしょう。
エアーシャワーの入口に入室ルールなどを表示したりするとより効果的です。
パスボックス
パスボックスとは、物品をクリーンルームへ出し入れするときに使われます。
二重ドア付き箱形の設備で、エアーシャワーと同様に両方のドアが同時に開かないようインターロック機能が付いています。
大きな物や台車などをクリーンルームに持ち込む場合は、中で清掃作業なども行うことが出来るパスエリアを作る場合や、大型のシートシャッター付きのエアーシャワーを使うこともあります。